研究概要 |
1. 研究目的 高度の安全性と信頼性が要求される沸騰水型原子炉(BWR)では,炉心および1次冷却水系のステンレス鋼製機器・配管の応力腐食割れを防止する目的で冷却水への水素注入が実施されるようになってきた。これに伴い,水中の溶存水素(dissolved hygrogen;DH)濃度を精密にin-situ(その場)計測できるセンサが必要とされている。本研究では高温高圧水中で使用できる固体電解質隔膜型DHセンサを開発し,これを用いて高温高圧水用のDH計測システムを作製することを目的とする。 2. 研究成果 1. 高温高圧水用DHセンサ特性測定装置の改良: 高温高圧ループの排水系にサンプリングバルブを設置し,水素濃度を計測できるようにした。これにより,ループ途中における水素の消費量を正しく評価できるようになった。 2. 高温高圧水用DHセンサーの試作:温度300℃,圧力8.6MPaまでの高温、高圧に耐える構造のセンサを考案した。作用電極としてPtペースト電極とIBS-Pt薄膜電極を用い,またセンサ内部の空気電極としてAg薄膜電極を用いたDHセンサを作製した。 3. 高温高圧水におけるDH応答特性の測定: 試作したセンサーを用いて、150〜300℃の範囲の各温度におけるDH応答特性を調べた。その結果,250℃以上の温度におけるセンサ出力電圧とDH濃度との関係は熱力学的理論式(Nemstの式)に完全に一致することが分かった。250℃以下の温度においてもセンサ出力電圧とDH濃度との間には直線閣係が認められ,その勾配は理論式に一致したが,絶対値は理論値と異なっていた。これは空気基準電極の動作が不完全であるためと考えられる。また,センサの出力電圧に対する溶液のpHおよび溶存酸紫の影響はないことが分かった。
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