研究課題/領域番号 |
09555224
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
田口 正美 秋田大学, 工学資源学部, 助教授 (90143073)
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研究分担者 |
平沢 今吉 新神戸電機株式会社, 埼玉研究所, 主任研究員
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キーワード | 鉛バッテリー / リグニン / 負極鉛 / 充放電 / 異常成長 / 分子構造 / 水晶振動子マイクロバランス法 |
研究概要 |
本年度の研究では、異なる分子構造を有する天然リグニンおよびリグニン誘導体による充放電試験を実施し、負極Pb上での金属Pbの異常成長を調査した。また、放電過程におけるリグニンの役割を明らかにするため、回転リング-ディスク電極法による解析を行った。得られた結果は、以下に要約できる。 (1) 充電電圧はリグニンの添加により大幅に上昇する。また、充電電圧の高い電解液系ほど、負極Pb上の{Pb(111)/PbSO_4(211)}強度比が低下することから、充電電圧の上昇は金属状Pbの異常成長をその場で判断する有効な指針になる。 (2) 天然リグニンでは、標準リグニンよりも部分脱スルホンリグニンの方が、金属Pbの成長抑止に対して効果的である。また、高分子量リグニンが必ずしも有効ではなく、分子量より官能基の配置の方が異常成長の抑止には重要と考えられる。 (3) 充電過程は電荷移行が可能なサイトへのPb^<2+>イオンの移動によって律速され、負極Pb面上に吸着したリグニンがその移動を阻害する。一方、放電過程では、電解液中にリグニンを添加することで、負極Pbの固体状態での反応Pb+SO_4^<2->→PbSO_4+2e^-が抑制され、溶解反応Pb→Pb^<2+>+2e^-の割合が増すと推定される。 (4) リグニン誘導体では、フェノール性OH基よりもカルボキシル基を有するもの、スルフィド基をアルコール性OH基に替えたものが、金属Pbの成長抑止に有効である。また、スルフィド基をスルフォン酸塩に替えた場合にも、有効性を確認できる。しかし、有効性と経済性の両面で、これらは天然リグニンに代替できる人工有機添加物とはならない。
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