研究概要 |
金属-酸素系セラミックスにおいては、還元酸化を繰り返すと前駆体である還元相の陽イオンの配置を保ったままで酸素が進入する際に準安定相が出現する。この原理をZrO_2-CeO_2系に適用して種々の準安定固溶体の作製を試み、さらに得られた相の局所原子配列の特徴、光学的性質、およびイオン伝導などの固体イオニクス特性について検討した。 1600℃以上の高温で得られた立方晶相を冷却して得られる正方晶t'相を出発試料とした。T(deox)=1300℃でt'相を還元してパイロクロア相(Ce_2Zr_2O_7,pyro)を作製し、その後873Kで酸化することにより陽イオンが規則配置した新規な準安定なκ相(CeZrO_4,κ)が得られた。温度T(deox)を下げて還元で得られたCaF_2関連構造を、その後873Kで酸化すると、t'相と同様の陽イオンの不規則配置は有するが、ラマン散乱により明らかに別相として区別される新規な準安定t'_<meta>相(CeZrO_4,t'_<meta>)が出現した。純粋なκ相およびt'_<meta>相は本研究で初めて見出された相であり、Ce-O-Ce間の距離はt'⇒t'_<meta>⇒κ相の順に小さくなった。 同じCeZrO_4組成でありながら、準安定相t'_<meta>およびκ相の電気伝導度はt'相より数倍大きくなった。準安定相の作製により陽イオン-酸素イオン間の距離、および局所偏倚を変えてやることにより電気伝導度を制御できることが分かった。電荷担体はほとんど電子であったがイオン伝導も観測された。従来、電気伝導度の制御には異なる価数の異種イオンをドープするのが一般的であったが、本研究結果は準安定相の作製により陽イオンの分布と陽イオンと酸素イオンの局所構造を変化させることにより制御可能であることを示唆している。
|