研究概要 |
DNAとタンパク質との複合体をモデル的に作製し、(1)複合体形成に伴う変形能と膜透過能の変化を測定し、両者の相関関係を検討した。(2)DNAの変形能を支配する共存タンパク質の影響を明らかにした。(3)膜内部でのDNA複合体の観察を干渉顕微鏡を適用して検討した。具体的には、 1. DNA(Calf thymus)とヒストンとの複合体(クロマチン)を調製した。クロマチン状態であることを、原子間力顕微鏡により確認した(直径30mm繊維状であることを確認)。 平均孔径15,35,75nmのウイルス除去膜を用いて、DNA/ヒストン複合体の排除率をウイルス除去用中空糸膜透過評価装置を用いて無菌室内にて測定した。この時の共存タンパク質のDNA排除性に与える影響を検討した所、クロマチン状DNAの排除性は、DNA単独系に比べて顕著に向上していた。また、膜内部でのDNA/ヒストン複合体の観察を干渉顕微鏡を適用した所、繊維状に拡散していることが、明らかとなった。 2. 平均孔径15,35,75nmのウイルス除去膜を用いて、グロプリン共存下におけるDNA(Calf thymus)の排除率を計測し、DNAの排除性に与える共存タンパク質の影響を明らかにした。膜内部でのDNA/グロプリン複合体の観察を干渉顕微鏡を適用して、DNAの形態を観察した。 3. 純水中および緩衝液中のDNA分子は、再生セルロース製ウイルス除去膜には、吸着されなかった。さらに、緩衝液を含浸させた多孔膜中のDNAの拡散系数は、バルク中の拡散系数の約1.4倍であった。従ってDNA分子は、多孔膜中を糸状に形状を変化させることにより、その分子径よりも小さな孔中を拡散して透過することが明らかとなった。
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