研究概要 |
水産生物の加工時に生じる赤血球膜物質と溶血液の工学的利用を目指し、イワシ、サバなど赤身の魚の血液の血球膜にヘモグロビンやポルフィリン等各種機能分子を組み込んで新たな選択的反応場を作り出すことを目的に進めている。初年度は、血液水そのものの悪臭物質分離の可能性試験、ホワイトゴ-スト膜の調整法の検討、生理活性物質を導入した人工膜作成の基礎的検討を行い、次のような結果を得た。 (1)魚血液水の悪臭ガス吸収性を評価するため、イワシ血液について平衡論的に反応性を調べたところ、トリメチルアミンおよびアンモニアに対してそれぞれ約10^<17>,10^<12>(最大)の平衡定数を与えた。またトリメチルアミン、メチルメルカプタン等との反応の速度定数を決定するとともに活性化エネルギーも評価した。速度論的も平衡論的にも高い反応性を有することがわかり、予定している機能性分子導入型ゴ-スト膜の導入ホスト分子の候補としてイワシヘモグロビンが有効であるとの見通しを得た。 (2)ゴ-ストの調製を検討した結果、網目構造の膜と穴あき血球膜(ホワイトゴ-スト)が得られた。前者は網目サイズ5〜10μmで3次元的網目構造が形成されており、新たに分子ふるいやゲスト分子保持などの機能が期待されるものであることがわかった。後者も特定の条件下で得られているが、さらに安定で効率的な調整法の開発を進めている。 (3)ヘミン誘導体等を含有するポリビニルアルコール薄膜を各種条件下で調整し、ヘミン、ヘモグロビンなど生理活性物質の膜内封入および人工膜との複層化のための基礎的検討を行った。
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