研究概要 |
水産生物の加工時に生じる赤血球膜物質と溶血液の工学的利用を目指し,イワシ,サバなどの魚血液の血球膜にポルフィリン等各種機能分子を組み込んで新たな選択的反応場を作り出すことを目的に進めている。各種物質のホワイトゴースト膜(穴あき血球膜)内への封入および取り出し,血液の悪臭ガス物質分離の試験評価、生理活性物質を化学修飾ちた人工膜の作成等を行い,次のような結果が得られた。(1)ホワイトゴースト膜内への機能分子の封入および膜内からの取り出し条件を検討し,ポルフィリン類,カルボン酸,アルコール,レゾルシン環状4量体など各種物質に適用した。吸光光度およびHPLC法で評価した結果,ポルフィリン類は封入率,取出率ともに高く,アルコールは相対的に低かった。(2)悪臭ガス吸収特性に関して,血液水溶液相の吸光光度法でメチルメルカプタンおよびトリメチルアミンのヒツジ血液(魚血液の良好な模擬試料として扱える)に対する反応性を反応速度論的に評価した。(3)ポリビニルアルコールとのエステル結合を介してヘミン錯体をペンダント形に固定化させた膜物質を作製し,イミダゾールとの良好な反応性が確認された。また,NMRスペクトル測定から固定化によって反磁性に変化していることから,結合したヘミン錯体同士の間で"face to face"型相互作用が生じ,コンフォメーションに影響していることが示唆された。(4)ホワイトゴースト膜の糖類の分子認識および分離を検討するため,糖鎖クラスターを有するレゾルシン環状四量体をモデルとして,これをODSカラムに被覆した微小膜物質と各種の糖類との相互作用をHPLC法で測定した。保持時間の比較によりすべての糖で保持されるが,その程度はオリゴ糖になるほど顕著で,かつ糖の構造の違いが顕著に現れた。
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