研究概要 |
細胞壁を除去したプロトプラストの適応機能や物質移動能を最大限に利用することにより、生物細胞が有する潜在的な能力を最大限に引き出す新規なバイオリアクターシステムとして、プロトプラストの機能性のゲルを人工の細胞壁として装着する新規な有用物質生産システム(ゲルの種類を変えることにより、様々な機能を有する人工の細胞壁を自由に装着できる)を考案し、種々な検討を行った。 人工細胞壁として利用可能な種々の天然多糖類を培地に添加してニチニチソウ細胞の懸濁培養を行った結果、アルギン酸を添加した場合に様々な抗菌酵素(5'-phosphodiesterase,chitinaseなど)やインドールアルカロイド(ajmalicine,catharanthine,tryptamineなど)の生産および細胞外への分泌が促進され、アルギン酸がエリシター様機能を有することが明らかとなった。 次に、エリシター様機能を有するアルギン酸ゲルを人工細胞壁として装着した固定化ニチニチソウプロトプラストを用いて、インドールアルキカロイド生産を試みた。アルギン酸固定化プロトプラストでは、コントロールとして培養したアルギン酸固定化細胞やアガロース固定化プロトプラストに比べて多量のインドールアルカロイドが培養液中に放出された。固定化プロトプラストを蛍光顕微鏡[DMRBE/RD・ライカ社]で観察した結果、培養7日目以降、細胞壁の再生が認められた。プロトプラストの状態を長期間維持するために、ゲル内に移動可能な種々の細胞壁再生阻害剤の添加を検討した。その結果、塩化カルシウムを培地中に添加することにより、長期間に渡りプロトプラストの状態が維持され、インドールアルカロイドの生産量が増大し、種々のインドールアルカロイドの比生産性は固定化細胞の数十倍を示した。以上の内容を論文として発表した(研究発表参照)。
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