研究概要 |
前年度作製した野生型酵素よりも高い活性を示す変異型酵素(GLS-H)と低い活性を示す変異型酵素(GLS-L)および野生型酵素(GLS-W)の遺伝子をそれぞれ導入した菌株(H株,L株,W株)の2株ずつの組合せについて混合連続培養を行ったところ、どちらか一方の株か選択される場合より、2株が安定に共存する場合の方が多かった。このような共存は、2株の間の性質が近い程おこりにくいはずなので、遺伝子レベルでどこまで近くすれば共存しなくなるかを調べるために、遺伝子の非翻訳領域に4塩基挿入した変異株を作製した。変異を導入した領域は、アミノ酸に翻訳される領域でも他の遺伝子発現に影響する領域でもないので、野生株と変異株とは遺伝子レベルで限りなく近い関係にあると考えられる。この両株の混合連続培養を前年度と同様な方法で行ったところ、2株が共存した定常状態が観察された。また、その共存状態は初期混合比によらず一定であり、安定な共存状態であった。このことは、競争者の性質がいかに近くても、共存状態をとりうることがあることを示している。これは、競争者間の相互作用に由来するものであろうが、進化の機構の解明およびその応用の上で非常に重要な知見である。
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