研究概要 |
[1] RNase1-FGF融合タンパク質の細胞成長阻害活性の特異性の評価 ヒト膵臓リボヌクレアーゼ(RNase1)のC末端側にヒト塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)を融合させたRNase1-bFGF融合蛋白質(RNF)は,FGF受容体高発現マウス黒色腫B16/BL6細胞株の増殖を約3μMの濃度で50%阻害(GI_<50>)することをすでに確かめていたが,様々なヒト由来の培養ガン細胞に対しても調べたところ,いくつかの細胞株に対してやはリμMのオーダーでその増殖を阻害することが分かった。それらの細胞株は主に固形ガン由来であり,そのうち3種類ではFGF受容体の発現が確認されていた。残りについてはFGF受容体の発現の有無は不明であるが,FGF受容体を発現しないことが確認されている細胞に対する増殖阻害効果は認められないことから,RNFの細胞成長阻害活性はFGF受容体を過剰発現する細胞に特異的であると結論した。 [2] RNFの細胞成長阻害活性の強化法の指針の確立 FGF受容体を過剰発現する培養ガン細胞に対するRNFの成長阻害活性の強化法を検討した。その結果,毒素ドメインであるRNase1は,細胞内でのプロテアーゼによって分解されにくいこと,細胞内のRNaseインヒビターによって阻害されにくいこと,さらには粗面小胞体に効率的に集積しRNAを分解することが重要であるという結果が得られ,ヒトリボヌクレアーゼを基本骨格としたよりいっそう強力な制ガン剤の調製のための指針が確立できた。
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