研究概要 |
氷核活性細菌は,一般によく知られているヨウ化銀よりもはるかに高い温度で小滴を凍結させる物質を作ることを報告してきた。従来,物理的現象として考えられていた水の凍結という現象に細菌が深くかかわっていることは非常に興味深く,こうした細菌の生活の知恵を学びたいと思い,上記の課題名の研究を進めてきた。 食品工業利用微生物の1種であるXanthomonas compestris pv.translucens(X.c.t.)が氷核活性を有する細菌であることがわかった。そこで,当研究室では衛生面で安全であると考えられるX.c.t.菌株を用いて,氷核剤とキサンタンガムの生産を試みた結果,炭素源としてショ糖を用いた場合には,ショ糖100mgから76.6mgのキサンタンガムが生産されることがわかった。その時の細胞の氷核形成温度(T_<50>)は-2.9℃であった。次に経済的な原料を使用して,氷核剤(細胞)とキサンタンガムの生産を試みた結果,ホエーの濃度が約6%付近がキサンタンガムの生産が多く,氷核剤のT_<50>も高いことがわかった。初発pHは7付近で培養温度は20℃付近が良好であった。 市販のキサンタンガムの構成成分と比較するために,菌体外のキサンタンガムを加水分解して,TLC分析した結果,グルコース,マンノース,グルクロン酸と酢酸から構成されていることがわかり,ピルビン酸は含まれていないことがわかった。 以上の結果から,X.c.t.菌株を使用して,キサンタンガムを生産するとともに,菌体は氷核剤として,人工降雪剤,凍結濃縮剤,蓄冷材や食品素材改良材などへの応用が期待される。
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