研究概要 |
2,2′-ジヒドロキシアゾベンゼン(DHAB)-アニオン性金属錯体のHPLC分離において,pH緩衝成分等の各種親水性対イオンが,良好な保持と顕著な分離効率の向上をもたらすことを見出した.さらに,4-(2-ピリジルアゾ)レソルシノール(PAR)のアニオン性金属錯体へ本研究を拡張し,同様に親水性対イオンが有効に作用することを明らかにした.また,親水性対イオン種の拡張を目的として,pH緩衝成分(tris(hyroxymethyl)aminomethaneおよびその類縁体),アルカリ金属イオン,アンモニウムイオン,第四級アンモニウムイオン(tetramethylammonium ion,tetraetylammonium ion)等の親水性対イオンについて検討を行った.DHAB,PAR等のアゾ色素-金属錯体のHPLCにおいて,上述の親水性対イオンは良好な分離をもたらしたが,イオン種の違いによる保持容量の顕著な差異は見られなかった.また,濃度依存性が認められたことから,これら親水性イオンを用いる逆相分配HPLC保持機構としては,イオン対分配モデルが妥当であると考えた.DHAB,PAR等のアゾ色素-金属錯体の分離において,親水性対イオンは良好な分離をもたらし,その結果,従来汎用されている疎水性対イオン,テトラブチルアンモニウムイオン(TBA^+)に比べて,迅速かつ高感度な検出が可能となり,TBA^+の場合には30分程度を要した金属錯体間の分離が僅か数分で達成された.特筆すべきは,TBA^+の場合に比べ,各金属錯体ピーク間の分離係数に向上が見られたことである.本システムで培われる新手法は,HPLC分離技術に技術革新をもたらすことが期待できる.すなわち,イオン対溶媒抽出の概念に基づく従来のシステムとは全く性格を異にし,古典的なIPRP-HPLCの設計思想から脱却した,新しい概念を提唱するものである.
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