研究概要 |
非ヘム鉄錯体/酸素/電子伝達系による新規なモノオキシゲナーゼ型反応およびジオキシゲナーゼ型反応を開発する研究の一環として,2および3価鉄およびマンガン錯体による芳香環,アルカン,アルケンの酸素化を行い,新しい反応性を見いだした。 α-ケト酸依存型ジオキシゲナーゼの機能モデル反応を行い,シクロオクテンやノルポルネンの非自動酸化型の選択的なエポキシ化やシクロヘキサンやアダマンタンのようなアルカンの水酸化,カルボニル化のような酸素化反応を見いだした。活性種は鉄(II)とα-ケト酸であるペンゾイルギ酸から生成するFe(IV)=Oであると考えられるが,その生成を示唆する分光学的な情報は得られていない。Fe(V)=Oと比較して反応性が乏しいことを反映して,非常に遅い反応であるが,触媒的な反応が進行することが明らかになった。 カテコールジオキシゲナーゼモデルによる芳香環からのジカルポン酸の合成反応に関しては,Fe(III)錯体によるintradiol型開裂を選択的,かつ,触媒的に行う反応系とは別に,Mn(II)による新たな反応を開発した。これはマンガンカテコールジオキシゲナーゼの最初のモデル反応である。反応中間体として,Mn(II)とセミキノナートから生成するMn(II)-セミキノナート錯体を単離し,ESI-MassやESR,IR,UV一VISによるスペクトル解析した結果,Mn(III)-カテコラートではなく,Mn(II)-セミキノナートの電子状態を保っていることを明らかにした。酸素による芳香環開裂機構を考える上で重要な知見が得られた。
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