研究概要 |
本研究で得られた知見を総括すると以下のようになる。 1.分光学的測定の結果から,ボールミルを用いたグラファイトでの表面改質により,π電子を有するグラファイトからMgNi合金表面のMgへ電荷移動が起こり,Mgと酸素の結合がより弱くなり,その結果、酸素とNiの結合がより強くなると考えられた。また,グラファイトで表面改質を行うと,MhNi合金表面における金属NiのMgに対する組成比が増大することがわかった。 2.Mg_2Ni合金を70wt%のNiで改質した試料の水素吸蔵速度は、30℃でさえ著しく増大し,水素吸蔵量も1時間以内でH/Mが約1.0に達した。また、この試料の充放電試験より、放電容量は約870mAhg(Mg_2Ni)^<-1>という非常に高い値を示した。また、導電材としてCu粉末の代わりに10倍量のNi粉末を用いた場合には、やく1080mAhg(Mg_2Ni)^<-1>とさらに高い放電容量を示すことが明らかになった。さらに、改質するNi量を増加させるとリサイクル特性が向上することも明らかになった。 3.三成分系Mg_<0.9>M_<0.1>Ni合金(M=Ti,V)は、MgNiに比べて初期放電容量はやや減少するものの、リサイクル特性は飛躍的に向上することがわかった。さらに、その原因は、Mg_<0.9>Ti_<0.1>Ni合金では、合金表面に形成されたTi酸化物層のためであり、Mg_<0・9>V_<0.1>Ni合金では、合金内のV成分が優先的にアルカリ電解液へ酸化溶出するためであることが明らかになった。さらに、四成分系Mg_<0.9>Ti_XV_<0.1-×>Ni合金(X=0.04-0.07)では、TiおよびVの犠牲的な働きが相乗的に寄与するため、サイクル特性は三成分系合金よりもさらに向上することが明らかになった。
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