研究概要 |
ビスマス酸化物を主成分とするガラスは,SiO_2などのガラス網目形成酸化物を含まない“non-conventional"なガラスであり'ビスマスイオンの価数.酸素配位数,酸素多面体の結合様式,酸化物イオンの分極性の度合等に不明な点が多々あるのでガラスの理工学の観点から興味深い物質である。また,ビスマス含有ガラスはサーモクロミズム,光電導性,フォトクロミズムなどの興味深い特性を示し,それを結晶化したガラスセラミックスは熱処理温度の違いで多様な色調を持つ透明ガラスセラミックスとなる。本研究はこれらの興味深い機能に関する研究ををさらに発展させて,非線形光学・レーザーフォトニクス用材料など光機能性材料への応用の可能性を検討するとともに,ガラスの電子構造とこのような物性の発現のメカニズムの相関を明らかにすることを目的としている。本年度はBi_2O_3-CdO-Al_2O_3ガラスのフォトクロミズを調べ,ガラス組成・熱処理との相関を明らかにした。Bi_2O_3含有量が増加するとフォトクロミック特性は増加したが,その後の酸化熱処理によってさらに著しい増大が認められた。フォトクロミズムに最適な組成は13BiO_<1.5>-43CdO-44AlO_<1.5>であった。Bi_2O_3の増加によってBi-O-Cd結合が多く生成するとLewis塩基性のオキサイドイオンが増えるためカドミニウムイオンが電子センターとなり,電子密度の大きなオキサイドイオンにはホールセンターが生成する。熱処理前後のXPS測定より熱処理によってBi^<3+>イオンはBi^<5+>に酸化されるためCd^+イオンが生成し易いとのの結論を得た。また,Bi_2O_3-Li_2O系二成分ではLi_2Oが20%から80%までの範囲でガラス化すること,XPSよりLi_2O含有量の増加に伴ってOlsは高エネルギー側へ化学シフトすること,さらにOlsは巾の狭い単一のシグナルであることを明らかにしLi^+イオンはガラス網目をつなげる役割をしていることを明らかにした。
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