研究概要 |
本研究は液晶材料のみならず他の芳香族系有機材料の開発も視野に入れた一般性のある反応開発を目的としている.従って、初年度は反応条件の精査を中心に実施した. 1.ニッケル触媒、塩基および反応溶媒の探索(担当:石山、宮浦) これまでの研究で反応に使用する遷移金属触媒はその配位子の性質により大きく影響されることが明らかになっている. これまでの研究で反応に使用する遷移金属触媒はその配位子の性質により大きく影響されることが明らかになっている.従って、単座配位子であるPh_3pや二座配位子であるdpPe,dppp,dppb,dppfなどを有するニッケル錯体を調製し、その触媒活性を調査した.まだ、ホウ素化合物のクロスカップリング反応では塩基の添加が必須であるが、ニッケル触媒反応における最適な塩基および溶媒の組み合わせについても条件検討を行った.結果、溶媒としてdioxane、配位子としては二座配位子のdppfがもっとも良く、塩基はリン酸カリウムを使用した時に目的物であるビアリールを収率良く与えることを見いだした. 2.反応における置換基効果(担当:石山、宮浦) クロロベンゼン上の置換基はニッケル錯体に対する酸化付加速度に大きく影響をおよぼす.従って、種々の電子供与基または電子吸引基を有するクロロベンゼンについて一般性の高い反応とするため反応を調査した.電子吸引基を有するクロロベンゼン類は酸化付加が速く、ベンゼン上の位置に関係なく反応が進行することを見出した.一方、電子供与基の場合、酸化付加が遅く触媒の失活が速いため配位子を過剰に添加することで目的とするビアリールを得られることがわかった.特に窒素などヘテロ芳香族系化合物は医薬、農薬として重要であることから、これらのビアリール合成についても併せて調査したところ、これらの化合物でも対応するビアリールが得られることを見出した. 3.アリールボロン酸の合成法の開発(担当:宮浦、山本) 反応を効率的に行うには芳香族ボロン酸の合成をいかに行うかが問題となる.現在、芳香族ボロン酸はグリニヤールまたはリチウム試薬とホウ酸エステルの反応により合成するのが一般的である.これに対して我々は先に、アルコキシジボロンとハロベンゼンのクロスカップリング反応による合成法を報告した.反応は触媒的に進行し安価であるが、アルコキシジボロンの合成が難しく実用的でない.従って、遷移金属触媒によるハロボランの還元的二量化反応または低温での銅蒸気との反応を現在実施中である.10年度は、さらに反応を精査し、より直接的な合成法の開発を行う.
|