我々は抗生物質や光反応によるDNA切断についてその分子認識と切断の化学について研究を行い、抗生物質や光によるDNAの修飾や切断が高い特異性を有した原子レベルで特異的な反応により起こっていることを明らかにしてきた。これらの反応はこれらの小分子がDNAの決まった部位に反応部位を巧妙に近づけることにより達成していることを見い出している。また最近、我々は抗生物質デュオカルマイシンがディスタマイシンなどの他種分子とヘテロダイマーを形成し協同的にDNAの分子認識を行ない、デュオカルマイシン単独の場合とは異なる塩基配列を、ほぼ1万倍の反応速度でアルキル化することを発見した。本研究の目的は、これら天然物による協同的なDNAの配列認識の分子機構を明らかにし、その成果を基礎に、DNAを特定位置で切断できる協同的分子認識能を持つ新しいタイプのアルキル化剤の分子設計を目的としている。まずデュオカルマイシンのヘテロダイマーを形成による協同的にDNAの分子認識によるアルキル化についてその分子機構を詳細に解析した。750MHz1HNMRを用いて、ヘテロダイマーの構造をディスタンスジオメトリー法により解明した。さらにこれらの相互作用を視覚化し、既存のDNA切断分子の巧妙な協同的分子認識について分子認識の体系化を試みた。全自動シーケンサーを利用してDNA切断の解析を効率よくまた迅速に行うう手法を確立した。上記の検討で得られた知見に基づき、高いDNA塩基配列認識能もつ協同的分子認識能を持つ新しいタイプの分子対の設計を行い化学合成した。具体的にはDuocar mycin B2のNaOMeによる加水分解により得られるDuoAのA環生成物1にメチルイミダゾール、メチルピロールペプチドのDNA結合性認識ユニツトを共有結合させた種々の化合物を合成し、その反応性について検討した
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