タキソ-ル基本骨格の具体的な合成設計としては、最も構築が困難とされる、C-11位の橋頭位に二重結合を含む歪みの大きい8員環(B環)を1-2位で連結させ構築する方針で研究を進行中である。この試みはこれまでには報告のない新しい発想であり、成功すればタキソ-ル合成の新たな方法論を提供することができる。 筆者らはこれまでに、分子内反応を制御するための方法論に関する研究蓄積があり、今回考案した歪みの大きい8員環(B環)を1-2位で連結させ構築しようという合成ルートもその理論に基いたものである。最初の課題としてA環部とC環部にあたる構成単位の新規合成法の開発を行った。 (1)タキソ-ルA環部新規合成法の開発:炭素六員環の構築についてはニトリルオキシドの分子内[3+2]環化付加反応を採用し、その反応によって得られるオキサゾリン環の官能基変換を経てA環部合成単位へ誘導した。 (2)タキソ-ルC環部新規合成法の開発:新規なヒドロキサム酸連結系分子内Diels-Alder反応の開発を行った。結果として、このヒドロキサム酸連結系は、分子内Diels-Alder反応の要求される反応性、立体選択性等を改善する画期的な系であることが明らかとなった。この戦略を用いてタキソ-ルC環部の合成を行った。
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