人工機能側鎖を持つ非天然アミノ酸の実用合成とペプチドや蛋白質への部位特異的導入

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09555287
• 研究機関: 岡山大学
• 研究代表者: 宍戸 昌彦 岡山大学, 工学部, 教授 (60026268)
• 研究分担者: 渡辺 英彦 渡辺化学工業(株), 研究開発部, 部長 ; 芳坂 貴弘 岡山大学, 工学部, 助手 (30263619)
• キーワード: 非天然アミノ酸 / 実用合成 / 蛍光 / 電子移動 / ペプチド / 蛋白質

研究概要

本研究は蛍光発色基、光・電子機能基、核酸塩基、などの機能側鎖を持つ種々の非天然アミノ酸の合成法を最適化し、実用的な合成法と精製法を確立することを目的とする。合成した種々の非天然アミノ酸をペプチドや蛋白質に導入し、その導入可能性や機能および用途開発を検討する。これらの研究により、ペプチドや蛋白質の新しい構成成分として種々の非天然アミノ酸を容易に利用できるようにする。
本年度は側鎖に蛍光発色基をもつ非天然アミノ酸として2-ピレニルアラニンを新たに合成した、また光・電子機能基をもつ非天然アミノ酸として、アンスラキノニルアラニン、フェロセニルアラニン、およびビオローゲン基をもつアミノ酸を新規に合成した。またアンスラキノニル基やフェロセニル基を種々の長さのスペーサーで結合したアミノ酸も合成した。さらにすでに基本的な合成方法が発表されていた1-ピレニルアラニンについては純度や収率の最適化を行った結果、製品として市販するに至った。
これらの非天然アミノ酸を含むペプチドの合成を固相合成法によって行った。特に代表的な環状ペプチドであるグラミンシシンSの疎水基として非天然アミノ酸を導入した。これらの環状ペプチドは将来種々の生理活性分子の人工リガンドとしての機能が期待できる。
またアンスラキノニルアラニンなどの非天然アミノ酸をストレプトアビジンの特定の部位に導入し、ストレプトアビジンを人工酸化還元酵素に機能変換した。この人工酵素は電極との間で可逆的な酸化還元反応を行う事が分かった。

研究成果

• [文献書誌] M.Sisido, T.Matsubara, H.Shinohara: "Design and Synthesis of Peptides and Polypeptides of Electron Transporting Functions" Peptide Chemistry. 1996. 473-476 (1997)
• [文献書誌] T.Matsubara, H.Shinohara, M.Sisido: "Synthesis and Conformation of Poly(L-2-anthraquinonyl-alanine)" Macromolecules. 30・9. 2651-2656 (1997)
• [文献書誌] H.Shinohara, T.Matsubara, M.Sisiido: "Electrochemical Properties of Poly(L-2-anthraquinonyl-alanine)" Macromolecules. 30・9. 2657-2661 (1997)
• [文献書誌] M.Sisido: "Elementary Photoprocesses in Designed Chromophore Sequences on α-Helical Polypeptides" Advances in Photochemistry. 22. 197-228 (1997)
• [文献書誌] 宍戸昌彦: "超たんぱく質-生体分子システムの拡張を目指して-" 高分子加工. 46・12. 530-539 (1997)
• [文献書誌] 宍戸昌彦 ほか: "化学総説31「超分子をめざす化学」" 日本化学会編,学会出版センター, 241 (1997)