研究概要 |
本年度は本化学を展開する上で極めて重要かつ注目に値する諸事実を発見したので,それらについて報告する。 1.γ-Cyclodextrin-Bicapped C_<60>のN_2配位能について研究し,N_2錯体からのアンモニア発生を見い出した。 2.γ-Cyclodextrin-Bicapped C_<60>の触媒活性中心C_<60>への電子移動 NH_3発生の効率を高めるために重要な本錯体の触媒活性中心C_<60>への電子移動について種々検討し,以下の実験諸事実を得た。 (i)水中で18-クラウン-6/FeCl_2(1対1型)錯体を電子移動のメディエーターとして用いた場合,Bicappped C_<60>^<n->(n=1,2)が競争的に生成する。(ii)水中で18-クラウン-6/FeCl_2(2対3型)錯体を電子移動のメディエーターとして用いた場合,Bicapped C_<60>^<n->(n=1,2)の混合原子価状態を形成する。(iii)還元剤にNaHを用い,DMSO中で電子移動を行うと,Bicapped C_<60>^<1->が選択的に生成する。 (iv)還元剤にNaBH_4を用い,DMSO中で電子移動を行うと,Bicapped C_<60>^<2->が選択的に生成する。(v)電気化学[サイクリックボルタンメトリー(CV)および微分(示差)パルスボルタンメトリー(DPV)]的に電子移動を比較検討したところ,DMSOおよびDMF中で行うと,いずれの場合もBicapped C_<60>^<n->[n=1〜3(全て可逆的)]の段階的なCV波形並びにこれらに対応するDPV波形が見られる。なお,DPVにおいては,いずれの溶媒中でもBicapped C_<60>^<4->も観測される。一方,水中で行うと,Bicapped C_<60>^<n->[n=1(可逆的),2(不可逆的)]が2段階のCV波形並びにこれらに対応するDPV波形が見られる。(vi)水中で本錯体のベルト位の水酸基の酸素をFeCl_2のFe^<2+>に配位させたのち,NaOH水溶液を滴下するだけで高効率的にBicapped C_<60>^<1->が生成する。生成したBicapped C_<60>^<1->は溶存酸素によって再び徐々にBicapped C_<60>に変換され,一方,Bicapped C_<60>^<1->から電子を受け取った酸素はスーパーオキシドアニオンラジカル(O_2^-゚)となるが,次に,この反応系内に還元剤としてNa_2S_2O_4を加えると速やかにBicapped C_<60>^<1->が定量的に再生される。さらに,この電子移動については何度も繰り返しが可能であることも確認した。よって,化学的手法により触媒活性中心C_<60>へ一定かつ定量的に電子を供給することが可能となった。なお,ここで得られた実験事実に基づき電子移動のメカニズムの詳細について考察すると,電子はFe^<2+>とイオン結合したベルト位の水酸基の酸素を介してC_<60>へ移動するものと結論付けられる。
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