機能性高分子材料の優れた特徴を十分活かした薄膜を創製するために、有機分子を基板上に水平または垂直に配列するだけでなく(分子鎖軸方向の配列制御)、分子鎖の異方性を考慮して、分子鎖軸と垂直方向の向きを薄膜面内においても配列・配向(例えば、芳香環の向き、双極子の向きなど)制御した高分子薄膜を真空蒸着法により作成した。ポリ弗化ビニルオリゴマーを蒸発源温度、基板温度を制御することにより、基板面対して垂直に配向し、さらに圧電焦電特性を示すベータ型結晶からなる薄膜の作成に成功した。この基板面に対し垂直に配向した分子鎖をさらに膜面内で配向制御するために、櫛型電極を用いて、電場印可しながら薄膜を作成した。櫛型電極上に形成された薄膜の分子鎖は、基板に対し垂直に配向しているだけでなく、膜面内でも櫛型電極の電場方向に分子鎖の双極子が一定方向に配列した3次元配向制御薄膜の作成に成功した。このような高分子薄膜は、圧電性示し、さらに薄膜表面に吸着したガスの誘電率の大きさに比例した脱分極電流も観測された。このガスの吸脱着過程は完全に可逆的に起こり、吸着したガスの種類により脱分極電流が異なることから、異なるガスの種類を判別できる。この薄膜の応用として、匂いセンサーや、有毒ガス検知器、湿度センサーなどへの応用が考えられる。また、交互蒸着重合法で作成したナイロン薄膜では、膜厚方向と膜面内方向の電気伝導度に大きな異方性が現れ、膜面内方向のほうが、膜厚方向より1-2桁大きな伝導を示した。さらに伝導度の温度、湿度依存症も大きく変化することから、温度検知機、湿度センサーなどへの応用が考えられる。
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