研究課題/領域番号 |
09555294
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高井 光男 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (50002019)
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研究分担者 |
田島 健次 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助手 (00271643)
藤原 政司 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助手 (30229075)
柴 肇一 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (60241303)
惠良田 知樹 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (30213581)
棟方 正信 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (50261326)
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キーワード | 鮭皮コラーゲン / イカ甲キチン / 代用皮膚 / 繊維芽細胞 / 接着・増殖 / DNAラベリングインデックス |
研究概要 |
イカ甲のキチン含量は約34%、灰分はカニおよびエビ類の30〜45%に比較して0.5%と極端に低い。アルカリによる除蛋白と酸による中和と水洗で容易に精製キチンが得られる。水中難解したイカ甲キチンホモジネートから減圧下で均質な手漉きイカキチンシートを調製し、代用皮膚材料のベースとした。鮭皮コラーゲンの単離精製はクロロホルム-メタノール・水で脱脂を行い、クエン酸水溶液中で酸可溶性コラーゲンを抽出(4℃)し、ペプシン処理を行ってアテロ化鮭皮コラーゲンを調製した。鮭皮コラーゲンの全収量は原料皮に対して約20%であった。変性温度は約17℃であった。アミノ酸組成はヒドロキシプロリンの量が仔牛皮コラーゲン(変性温度37℃)の約2/3と少なかった。ヒドロキシプロリンはコラーゲン分子の分子内水素結合に関係していることから、このことが鮭皮コラーゲンの変性温度低下の原因と考えられる。イカ甲キチンシートにアテロ化鮭皮コラーゲンをラミネートすることにより代用皮膚試料を調製し、ヒト真皮由来の皮膚細胞の接着数、増殖数の測定を行った。DNAラベリングインデクスも測定した。キチンシート単体に比べ、鮭皮コラーゲン、仔牛皮コラーゲンをラミネートしたものの接着数が明らかに多いことが確認された。また、増殖能を調べた結果、鮭皮コラーゲンをラミネートしたものは、細胞播種から8日後仔牛皮コラーゲンの1.3倍、イカキチン単体の1.5倍も増殖を活性化した。これは、鮭皮コラーゲンの変性温度が低いため、仔牛皮コラーゲンのような37℃の生理的条件下での繊維化高次構造による細胞増殖の抑制が起こらないことによるものと考えられる。増殖細胞のDNAラベリングインデックスを測定した結果、キチンシート単体、鮭皮コラーゲンおよび仔牛皮コラーゲンをラミネートしたもののいずれも正常ヒト真皮細胞のDNAラベリングインデックスと同様の値であることから、各試料上の皮膚細胞はガン化によって増殖が活性化しているのではなく正常な増殖をしていることが確認された。従って、鮭皮コラーゲンは、イカキチンシートにラミネートすることにより、細胞接着力・増殖力に優れた高性能代用皮膚材料として利用できるものと考えられる。
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