研究概要 |
本研究においては、ナイロン、ポリエステル、アセテート繊維の分散染色において、分散染料の可溶化剤および運搬体として、まずリン脂質類似化合物である、合成の2本鎖界面活性剤であるジアルキルジメチルアンモニウムブロミド[DADMAB,2Cn2C_1NBr(n=10〜18)]を用いることを試みた。分散染料としては、1,4-ジアミノアントラキノン(1,4-DAA)を用いた。また比較のために、通常の界面活性剤を用いて1,4-DAAを実用染色用に分散化した、市販染料であるMiketon Fast Red Violet Rも用いた。 まず、分散染料共存下におけるDADMABのベシクル形成について調べた結果、染料を内包した安定なベシクルが得られることを確認した。 つぎに、ナイロン6、ポリエステル、アセテート繊維/1,4-DAA系の染色速度および平衡染着量におよぼすDADMABの効果について検討した。その結果、Miketon Fast Red Violet RよりもDADMABで調製した染浴の方が、染色速度および飽和染着量が顕著に増大した。この結果は、DADMABを用いることによって、染色温度を下げることが可能になり、合成繊維の低温染色の可能性を示唆する。DADMABを用いても、染料は繊維内部まで均一に拡散しており、リング染色にはならず、また染色堅ろう度も全く変わらないことが分かった。
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