研究概要 |
2本の長鎖疎水基をもつ界面活性剤が形成するベシクルが多量の疎水性染料を可溶化することに着目して、分散染色に2本の長鎖疎水基をもつ界面活性剤を用いることを世界で初めて試みた。1,4-ジアミノアントラキノン(1,4-DAA)/ジアルキルジメチルアンモニウムブロミド(DADMAB)分散系においてアセテート繊維の染色を行った。アセテート繊維はその構造が緻密なために、比較的分子量の小さい分散染料を用いて、高温(80℃)で染色される。本研究においては、DADMABを用いることによって、染色温度を何度まで下げることができるかを中心に検討した。まず、1,4-DAAを内包したDADMABは2分子膜構造のベシクルを形成していることを電子顕微鏡写真によって確認した。1,4-DAA/DADMAB分散系においては、60℃でも80℃とほぼ同程度の染色性が得られ、染色温度依存性は小さい。また染色速度も60℃で、通常の分散剤を用いた80℃の染色速度と同程度であった。この結果は、アセテート繊維の染色温度を通常の染色温度である80℃から60℃程度まで下げることが可能であり、アセテート繊維の低温染色の可能性を示唆する。DADMABのアセテートに対する吸着量は通常の界面活性剤のそれよりもかなり大きい。得られた結果から、単分子状の分散染料を内包した2本鎖界面活性剤がアセテート繊維上に強く吸着し、濃厚な単分子状染料層から染色が進むものと推定した。
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