研究代表者らが独立に開発した高耐熱導電性高分子を活用して、高温下でも作動する高エネルギー出力の高分子二次電池の構築と性能試験を目的とした。 1) 酵素酸化劣化の解析 抗酸化ドーパントをドーピングしたポリピロールを調整し、各種スペクトル測定により加熱に伴う電子状態の変化を計測し酸素酸化劣化の解析した。高温下の電導度劣化の初期過程はポリピロールのN位からのプロトン脱りが引き金となることが明かとなった。高温下150℃の加熱によりカルボン酸が脱離して水酸基へと変換される。脱離後もポリピロールの酸素酸化抑制を果たすことが出来るものと考えられる。 2) 超抗酸化機能を持つドーパントの分子設計と機能評価 半経験的分子軌道計算(MOPAC Ver6.0)により、ポリピロールおよびドーパントの水素原子の結合エネルギーを計算した。結合エネルギーの大小関係より、サリチル酸が坑酸化ドーパントとして有効であることが判明した。スルホサリチル酸をドープしたポリピロールは、125℃100時間で10^<-2>S/cmを示す、極めて耐熱性の高い導電性高分子であることが実証された。 3) 機能分子のドーピング ドーパント分子を充分に機能させるための高いドーピング率を達成するための条件をポーラロンバンドの吸収を追跡、ハイドロキノン、ナフトキノンやアントラキノンのスルホン酸化合物をのドーパントとして選択し、従来のドーパントに較べ拡散速度は小さいものの、95%以上のドープが可能であった。 4) 蓄電電子デバイスの作製と評価 上記知見をもとに簡易電池セルを作製した。定電流印加による充放電特性を評価。従来ドーパントのポリアニリンに較べ、大きなエネルギー密度を持つことを確認した。更に新しい導電性高分子キャパシターも開発した。1000j時間80℃以上性能劣化のない、優れた高周波数特性をもつ事が明かとなった。
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