研究課題/領域番号 |
09555298
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研究機関 | 高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
鈴木 健訓 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 教授 (40162961)
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研究分担者 |
沖 雄一 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 助手 (40204094)
三浦 太一 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 助手 (80209717)
近藤 健次郎 高エネルギー加速器研究機構, 共通研究施設, 教授 (20004434)
沼尻 正晴 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 助手 (20189385)
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キーワード | 陽電子消滅 / ポジトロニウム / 複合材料 / 薄膜 / 高分子 / 多層膜 / 多層膜境界面 / 低速陽電子 |
研究概要 |
高分子の表面やミクロン程度の厚さのフィルムを陽電子消滅法で解析しようとした場合エネルギーの低い陽電子(〜keV)が必要である。さらに、これらの実験で陽電子寿命測定を行うとした場合、陽電子が高分子に入射した時間を決定する必要がある。このような装置として、低速陽電子短パルス化装置を開発した。時間分解能はパルスで半値幅0.6nsとかなり広いため、高分子中の2〜3nsと長い陽電子寿命は測定できるが、この装置は、金属の短い陽電子寿命測定には使用できない。 この装置を用いてポリエチレン、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂の複合材料の表面を測定した。エポキシ樹脂の複合材料では、材料製作の過程で表面に樹脂の層ができ、この層の厚さは1ミクロン程度である。この層の下に粒径が1〜100ミクロン程度のガラスビーズの複合材料ができる。これまでこれらの層の特徴(自由体積)や層の境界を測定するためには、材料を切断するという破壊的な手法しかなかった。本装置では入射する陽電子のエネルギーを変えることによって、陽電子の入射深さを変えることができ、表面の測定から1ミクロン程度の深さまでの材料の特徴を測定することが可能である。この複合材料の測定の結果、表面には樹脂部分の膜ができ空隙の量は少ないが、ガラス粉末のフィラーが多い1ミクロンより深い場所では、空隙の量が増えることが証明できた。金属の薄膜50nm程度の厚さをテフロンやポリエチレンに蒸着した試料では、50nmの金属部分では高分子特有の長寿命成分が現れないものの、50nmより深く入射するように陽電子のエネルギーを加速すると、長寿命成分が現れ金属膜と高分子膜境界の境界を検出できた。今後多くの高分子膜に応用が期待される。
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