研究概要 |
本研究は,超伝導薄膜型熱線流速計の開発と,それの超流動ヘリウム相からの蒸発現象の計測への応用を目的としており,今年は次の項目に関する研究を行った. a)校正および基礎実験用ヘリウム蒸気風洞の基礎開発を行った.これは,加熱によるHe IIの蒸発蒸気を作動流体として用いるもので,作動原理上,温度と圧力の安定性に優れ,温度2K〜5Kのヘリウム蒸気流が得られることが分かり,この方式で校正用風洞が校正できることが確かめられた. b)超伝導熱線流速計プローブ部(センシングエレメント)試作の第1段階として,クォ-ツ細線芯材を用い,その表面の一部に薄膜成膜を行ないエレメント化する技術の開発を超伝導温度計を例として成功裡に行った.その成果として,経年劣化の原因が確かめられ,その対策法が理解された.また,第2段階では薄膜積層タイプの開発へと進むが,それへ向けた基礎データの蓄積のため,ミクロな薄膜構造の観測,成分分析,臨界電流値などの詳しい測定が行われた. c)試作された超伝導熱線流速計を応用すべき,超流動ヘリウム自由界面からの蒸発現象についても,基礎研究の立場から実験がなされた.これは,第2音波熱パルス(熱衝撃波)を超流動ヘリウム自由界面に入射し,これを熱入力として起こる自由界面からの蒸発現象を調べるものである.レーザーホログラフィー干渉計や圧力計測によるデータ,数値計算結果等を総合することにより,蒸発現象の気体力学的側面と蒸発波面伝播における衝撃波伝播現象としての側面,さらに第2音波熱パルスの超流動ヘリウム自由界面での反射特性といった超流動流体力学の側面から調べられ,いくつかの学会発表及び論文発表を行った.
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