研究概要 |
最近,インテリジェント構造あるいはスマート構造と呼ばれる知能化構造への関心が高まっている。本研究では知能化構造への接近の一つである犠牲試験片取り付けによる構造モニタリングについて研究を行った。 犠牲試験片取付け法とは,構造部材の応力が拡大伝達されるように工夫した小型試験片を,構造物に設置して一定期間モニタリングを行い,犠牲試験片に生じた疲労損傷状態から,構造物の疲労損傷時期や応力状態を推定する方法である。本研究では,構造物に接着で取付ける亀裂伝播型の犠牲試験片を開発した。本体は,長さ方向中央部に人工亀裂を有する厚さ0.25mmの金属薄板で,スリットを含む中央部をフッ素樹脂フィルムで巻き,全体を2枚のエポキシ樹脂薄板に挟んで接着したものである。犠牲試験片を試作し,平滑材,切欠き材および溶接継手に設置して,一定応力振幅および指数分布のランダム荷重下で疲労試験を行った。実験の結果,開発した犠牲試験片は応力集中率が6程度あり,疲労損傷予知に利用できることが明らかになった。 これを標準型としてさらに,高感度の犠牲試験片の開発を行った。試行を繰り返し最終的に,非常に小さい応力振幅で作動する犠牲試験片の開発に成功した。この高感度犠牲試験片は,疲労損傷予知だけでなく,設置部位の長期応力度の推定にも利用できる。すなわち,歪ゲージのように応力履歴そのものをモニタリングするのではなく,応力の負荷過程を犠牲試験片に疲労損傷として蓄積し,犠牲試験片の疲労損傷状況をモニタリングして,構造物の長期応力度を推定するものである。以上の研究に対して,2件の特許申請を行った。 1) 構造物の疲労損傷予知モニタリングのための犠牲試験片,特許番号2799431号. 2) 構造物の長期応力度モニタリングのための犠牲試験片およびその使用方法,出願番号358725号.
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