研究概要 |
本研究は,バイオリーチングの効率化を目指す手法として,供給する気相を制御するものである。今年度においては,鉱石試料となる銅精鉱をさらに集めるとともに,鉄酸化細菌の酸化挙動において最適となる供給気相濃度を検討した。以下に,その結果をまとめる。 1. 銅精鉱として,昨年度収集した物のほかに,難溶性とされる硫比銅鉱を含む銅精鉱(チリ産)を入手し,その元素分析を行った。 2. 鉄酸化細菌としてThiobacillus fenooxidansを使用した第一鉄イオンの酸化実験において,供給気相を制御してその挙動を検討した。その結果,空気を吹込んだ場合と比較して,二酸化炭素をより多く(7%程度)供給すると,鉄酸化細菌の増殖速度が向上した。また,その状態において,酸素供給量を20%(空気における酸素濃度)以下にすることにより,鉄酸化細菌による第一鉄イオン酸化速度の増加が確認されたが,5%よりも低くすると逆に酸化速度は抑制された。以上の結果,本研究で用いているタンク型リアクターにおいて,供給気相は二酸化炭素は7%,酸素濃度は5%が最適であった。 3. 入手した銅精鉱は,チリ国において数多く産出される鉱石であるが,難溶性の硫砒銅精を含むため銅の生産に寄与できないものであった。本銅情鉱を対象に,パルプ濃度1%としてT.femooxidansによる回分式のバイオリーチング試験を行ったところ,含有する砒素のほとんとが溶液中に浸出し,硫砒銅精を含む銅精鉱のバイオリーチングに成功した。 4. 鉄酸化細菌として還元型硫黄化合物の酸化能を有しない種であるLeptospirillum femooxidansを用いて,硫化鉱物のリーチング試験を行った,硫化鉱物としては,最も代表的なものである黄鉄鉱を使用した。L femooxidansを用いることにより,リーチングの際に生じる硫酸の生成を抑えつつ,黄鉄鉱をほぼ完全に溶解させることが認められた。
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