研究概要 |
本研究は,バイオリーチングの効率化を目指す手法として,供給する気相中のガス成分の濃度比を制御することを検討したものである。本年度は,黄銅鉱,硫砒銅鉱などの難溶性の銅鉱物を含む銅精鉱に関してバイオリーチング実験を行い,浸出率を向上させることを検討した。対象とした銅精鉱は,主要銅鉱物として硫砒銅鉱,四面砒銅鉱といった砒素を含む銅鉱物,および黄銅鉱を含むものである。この精鉱は,パルプ濃度を1%として三角フラスコ中で行った通常のバイオリーチングでは,不純物として含まれる黄鉄鉱のみが溶解され,銅鉱物はほとんど溶解されなかった。銅浸出率を改善させるために,この精鉱を予め銀イオン溶液中に懸濁させたのちにバイオリーチングを行ったところ,銅鉱物の溶解が促進され30日間で80%の銅浸出率が得られ,一方で黄鉄鉱の溶解は抑制された。また,撹拌槽を用いて同じ精鉱のパルプ濃度を5%上昇させた場合でも,銀イオンによる前処理を行うことにより,前述と同様の結果が得られた。次に,この銀イオンによる難溶性銅鉱物浸出のメカニズムを検討するために,純度の高い硫砒銅鉱を用い検討を行った結果,硫砒銅鉱の溶解を促進させるためには銀イオンによる鉱物表面での置換反応と,第二鉄イオンによる酸化反応の両者が必要であることが判明した。銀イオンは置換と第二鉄イオンによる溶解を繰り返すため,初期に必要量を与えておけば充分であるのに対し,鉱物の溶解反応により還元された第一鉄イオンを鉄酸化細菌により速やかに第二鉄イオンに再生されることが必要となり,その反応を促進させるためには前年度までに検討した気相中のガス成分の制御が重要であることが判明した。本年度対象としたような砒素を含む銅精鉱は,従来の乾式製錬法では処理が困難であったが,今回開発したバイオリーチング法により実操業での取り扱いが可能となる。
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