研究概要 |
本年度は九州中部に位置し,地形的に明瞭な変位を伴う活断層を対象として,その存在位置を確定するとともに,断層上でのラドンガスの測定方法を確率することを目的とした。 (1)ラドン濃度の測定法としてシンチレーションカウンター法,液体シンチレーションカウンター法,およびイオニゼーションチェンバー法の3種類を検討した。地下深部からのガスの上昇が活発な噴気帯において測定を行ったところ,シンチレーションカウンター法とイオニゼーションチェンバー法による測定データには火山性地震や地球潮汐の影響が及んでいたので,コレラを活断層の地震応答特性の解析に用いるのは適切であることが明らかとなった。 (2)線素追跡アルゴリズムによって,熊本市南東部のLANDSAT TM画像からリニアメントを抽出したところ,連続性の良いリニアメントは「布田川断層」と対応した。この布田川断層上に位置する複数の箇所で,これに直交する方向に測線を設定し,シンチレーションカウンター法を適用した。原子数算定理論を用いて測定データからラドン原子数を求めたところ,各測線上の数地点で原子数のピークが見られた。拡散方程式の差分化による数値シミュレーションを用いて,計算による原子数の分布と測定値とが対応するように断層モデルを作成した結果,各測線で幅5m〜20mの範囲にある2〜4本の北落ちの断層が推定された。各推定断層の位置関係に基づくと,全ての測線を貫く走向 N50°E・傾斜60°NWの正断層が見出され,これは同様の走向方向をもつ副次的な正断層を伴うと考えられた。 (3)周波数効果を用いた強制分極法による電気探査をラドン濃度測定と同一の測線上で行い,見掛け比抵抗と充電率の分布を求めた。これを真の比抵抗と充電率の分布に変換するためのインバージョンプログラムを開発し,測定データに適用したところ,推定された断層モデルはラドン原子数の分布から得られた断層モデルと調和していることが明らかとなった。
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