最初に、日本型品種とインド型品種で差異のあるタンパク質スポットの遺伝様式を明らかにするために、F_2におけるタンパク質スポットの定量的な分析を行ったところ、これらのタンパク質スポットは、胚乳では3nとなるために、遺伝子型に対応し、F_2において1:1:1:1に分離することが確かめられた。次にイネ胚乳中に存在するタンパク質のうち、40kda以上で、既知のWxタンパク質やピルビン酸リン酸ジキナーゼ(PPDK)以外の12個のタンパク質につき、二次元電気泳動法によって分離後、N末端アミノ酸配列についてはPVDF膜にブロッティングし、中央部分のアミノ酸配列については、クリーブランド法によってタンパク質を断片化し、シークエンスを行い同定した。その結果、8種のタンパク質で既知のタンパク質と高いホモロジーが得られた。3種のタンパク質(74kDa、70kDa及び67kDa)はヒートタンパク質と推定された。6種のタンパク質はデンプン合成及び解糖に関わる酵素であった。すなわち枝切り酵素(96kDa)、ホスホグリセリン酸ムターゼ(69kDa)、エノラーゼ(57kDa)、D-キシルロースリダクターゼ(54kDa)、UDP-グルコースピロホスホリラーゼ(51kDa)、及びリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(45kDa)である。3種のタンパク質については既知のタンパク質とのホモロジーは認められず、同定することはできなかった。以上のことより、葉から胚乳に転流してきたショ糖は一方はデンプン合成に回り、一方は解糖系に入り代謝されることが推察される。またC_4ジカルボン酸経路の主要な酵素であるPPDKの発現について調べた結果、登熟の初期に高い発現が観察され、胚乳中での炭素の代謝に対する何らかの役割が推察される。
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