呼吸関連遺伝子の発現調節による作物の稔性制御に関する分子育種学的研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09556002
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 平井 篤志 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (60023470)
• 研究分担者: 中村 郁郎 (財)岩手生物工学研究センター, 主任研究員 ; 中園 幹生 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (70282697) ; 堤 伸浩 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (00202185)
• キーワード: イネ / 核ゲノム / 呼吸 / ミトコンドリアゲノム

研究概要

呼吸関連複合体を構成するタンパク質遺伝子のうち、核ゲノムにコードされている遺伝子の構造とその発現制御因子を明らかにするとともに、核とミトコンドリアゲノムのクロストークの実態を示すことを目的に研究を進めた。
イネミトコンドリア内膜の呼吸の電子伝達系に関与する、b-c_1複合体、シトクロム酸化酵素複合体,ATP合成酵素複合体、シアン耐性呼吸末端酸化酵素等を構成するタンパク質の遺伝子を_cDNAライブラリーから単離し、それらの塩基配列を明らかにした。ノーザンハイブリダイゼ-ショによる結果からb-c_1複合体では、核ゲノムコードのRISP遺伝子とミトコンドリアゲノムコードのcob遺伝子がともに発芽初期で高い表現を示し、5日目からは徐々に低下を示すことが明らかになった。この傾向はATP合成酵素複合体でも同じで、核コードのδ'遺伝子ε遺伝子とミトコンドリアコードのα遺伝子も同様であった。これは同時に調べた光合成関連遺伝子の発現と反対で、葉緑体における活性は徐々に増加していた。このことは植物におけるエネルギー供給が、発芽初期には貯蔵エネルギーを使用し、後に光合成でエネルギーを合成することを裏付けている。シアン耐性呼吸はATPを合成せず、熱を出すことが知られているが、低温においてシアン耐性呼吸末端酸化酵素遺伝子の発現が誘導されることを見つけた。植物において遺伝しレベルでの低温における発現誘導を示したのはこれがはじめてである。

研究成果

• [文献書誌] Saisho,D.et al.: "Characterization of the gene family for alternative oxidase from Arabidopsis thaliana" Plant Mol.Biol.35. 585-596 (1997)
• [文献書誌] Miyata,S. and A.Hirai: "Four kinds of plasmid-like DNA for rice mitochondria are transcribed" Breed.Sci.47. 51-55 (1997)
• [文献書誌] Kanno,A.et al.: "Chloroplast derived trnH gene is expressed in the mitochondrial genome of gramineous plants." Plant Mol. Biol.34. 353-356 (1997)
• [文献書誌] Kanno,A.et al.: "Maintenance of chloroplast-derived sequences in the mitochondrial DNA of Gramineae." Curr.Genet.32. 413-419 (1997)
• [文献書誌] Ito,Y.et al: "Transcript levels of tandem-arranged alternative oxidase genes in rice are increased by low temperature." Gene. 203. 121-129 (1997)
• [文献書誌] Kusaka,M.et al.: "Characterization of two rice genes for nuclear-encoded chloroplast ribosomal protein L12 and phylogenetic analysis of the acquisition of transit peptides" Theor Appl.Genet.(in press).