研究概要 |
ルチンは毛細血管を強化し,脳溢血等の出血性疾患を予防する機能を持つ.ソバの種子にはルチンが含まれており,日常の食事から摂食できる唯一のルチン源である.したがって,普通ソバにおける高ルチン含量品種の開発は重要な育種目標の一つである.1992年以来,当研究グループが確立したHPLCによる個体別のルチン含量定量法を用いて,ボタンソバについてルチン含量による個体選抜を行い,原品種の3倍のルチン含量を持つ系統を育成してきた.本研究では,少数の高含量個体のみを選抜するエリート選抜を行い,原品種の5から6倍の含量を持つ系統を得た.7世代の選抜後も含量の増加が停滞する傾向はみられず,さらに選抜効果が続くと考えられた.新品種として実用化するために,諸特性を調査した結果,種子収量は原品種と差がなく,栽培諸特性にも問題がなかった.原品種とは,開花が数日遅いこと,草丈がやや低いことなどで区別性が認められたので,高ルチン含量品種として,1999年に新品種登録を申請した.現在,より効率的に高ルチン含量系統を育成するために,近縁野生種F.homptropicumとの種間交雑から育成した自殖性普通ソバ系統の持つ自殖性を,本研究で開発した高ルチン含量系統に導入することを進めている.一方,近縁種であるダッタンソバは,普通ソバの約100倍のルチン含量をもつことをすでに報告した.そこで,ソバ属近縁種のルチン含量を測定したところ,宿根ソバがダッタンソバと同様に高い種子ルチン含量を持つことが明らかになった。普通ソバと宿根ソバおよびダッタンソバとの種間雑種はすでに獲得しており,今後これらを材料として,ダッタンソバなみの超高ルチン含量品種の開発を進める予定である.
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