研究概要 |
作物体の表面電位を指標として作物の養水分状態を非破壊的にリアルタイムに測定する装置を開発する目的で昨年までに試作した電位測定センサーでは,電極の耐久性,未知の要因による電位の変動,さらに作物体の測定部位による変動についての問題点があり,本年度はこれらの点こついて検討した. 1)測定センサーの試作品では,連続して数週間使用すると微細な埃や温度変化による結露などが起こり,電気回路が漏電して突然測定不能になる場合があった.これを防止するために,本年度は測定センサーを従来よりやや大型化させて気密性と断熱性を改良したところ,長期間の使用でも破損の頻度が飛躍的に軽減した. 2)測定センサーの試作品では,作物体への着脱を数回繰り返すと,電極部の銀線が破損する場合が認められた.本年度は電極部に接触する銀線と作物体に接触する銀線とを分離し,作物体に接触する銀線を着脱式にして交換できるようにした.これにより電極部の破損がほとんどなくなった. 3)作物体の測定部位による変動を検討するため,まず測定電位の基準となるア-ス電極を測定センサーと同一の銀塩化銀電極に変更し,ア-ス電位の安定性を向上させた.次に,大量に製作した測定センサーと新規購入の多チャンネルデータロガーを用いて,養分状態を異にする水耕栽培でのイネ,水分状態を変えた土耕ポット栽培でのインゲンマメおよび圃場栽培でのバレイショについて,同一個体の異なる節位,同一節位内の異なる位置,および隣接する複数の個体での電位を大量に測定し比較した.電位の日変化や測定部上部の切除に伴う電位の変化については昨年までとほぼ共通の結果が得られたものの,作物によって節位間での電位の変化が異なることが見いだされ,次年度での検討課題となった.
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