樋口ら(1993)は開花の主要因により光周期性、温周期性、栄養・生殖生長周期(VR)型の3タイプに分けて、花卉の類型化を行った。この類型は多様な花卉を発育相と開花誘導要因により類別化した画期的なものであるが、世界各国で実施された生育習性および花卉の開花調節の研究の大部分は生育相の視点から研究されておらず、莫大な論文が発表されている割には類別するための肝心なデータが不十分なものが多い。 研究代表らが現在までに実施した花卉の生育習性と開花調節のデータから、該当するものはつけ加えた。しかし研究代表らが実施した花卉の中ではアネモネ(発芽と花芽分化・開花に質的要求無し。10℃、4〜5週間処理で切り花本数と品質が高まる)、ステファノティス(花芽分化は中温で促進、高温で抑制。花芽分化後は高温が開花を促進、分化後低温では長日が開花を抑制、短日は著しく抑制、花芽分化に日長は関係しない)、スクテラリア・バイカレンシス(花芽分化・開花に日長と温度に対する質的要求無し)、ヒメヒマワリ(花芽分化と開花に温度に対する要求無し、日長に対しては質的要求性のある長日植物)、カンパニュラ・ラクティフローラ(花芽分化・開花に低温の質的要求無し、日長にたいして質的要求性のある長日植物)などは樋口らの類型に入らないことが明らかになった。 竹田(1999)は環境条件によって変化する発育相よりも、環境に対する反応の違いに着目して類型化したほうが応用場面において利便性が高いと考えて、主な栄養生長期間、開花時期、開花に対する温度と日長の影響によって区分している。 いずれにしても、花卉の生育習性の類型化に際しては春化や休眠をはじめ用語の明解な定義が必要である。
|