研究概要 |
無気門亜目のコナダニ類は種それぞれに特有の成分を,亜目全体に存在する後胴体部腺から分泌していると,認識している。一方,コナダニの種の同定には,種ごとに標本を作り計測と過去の標本との比較観察をする必要があり,専門家的な知識と技術が必要である。ところが,近年のGLC法及びGC/MS法の技術と感度の向上で,コナダニ1頭〜数頭で分泌腺の成分プロフィール及び成分の同定が可能となっている。またGC/FT-IRを効率的に使用することで,未知成分の同定と推定が混合物のままで確実に実施できる。約50種のコナダニ類を飼育し,性別,発育段階毎に,後胴体部腺部分泌物のプロフィールを集めた。その結果種毎にプロフィールが異なり,GLC分析だけで種の同定ができると結論した。次年度オーストラリアで開催の国際ダニ学会で報告の予定である。 コナダニ類で見つけている新規成分のα-アカリジアールがアトピー性皮膚炎患者に,顕著な皮膚反応を示すことが判明した。集積したプロフィールをもとに,コナダニ類中で分布状態をデータ化している。またヒョウヒダニ類に起因するアトピー性皮膚炎の原因と報告者が考えている化合物について,そのダニ類での分布状況を調べた。この化合物はその存在は検出できるものの,不安定で単離できず,これまでその化学構造の推定が不可能であったが,本年度に稼働を開始したGC/FT-IRによりその部分構造が確定した。現在その合成を遂行している。
|