無気門亜目ダニは外部形態に特徴が少なく、種の同定は経験を積んだ分類の専門家がプレパラート標本とした試料を詳細に観察しない限り、不可能である。一方陰気門亜目ダニ(ササラダニ類)の一部と無気門亜目ダニには後胴体部に後胴体部腺と呼ばれる一対の分泌腺が開口しており、警報フェロモン、集合フェロモン及び性フェロモン及び機能不明の様々な化合物が分泌されることが判っている。これらの研究をとおして、この分泌物のプロフィールが種毎に異なる可能性を認識した。そこで、無気門亜目101種(あるいは株)、及び陰気門亜目ダニ23種(あるいは株)の雌雄及びヒポプスを材料にGCプロフィールを収集した。一方これらのダニ92種(あるいは株)の染色体ITS-II領域をPCRで増幅し、大腸菌に組み込んでさらに増幅し、塩基配列を決定した。その結果、同種であればGCプロフィールとITS-II領域の塩基数及び配列がそれぞれ同じになることが確認出来た。なおGCプロフィールが極度に類似するものの塩基数と配列が異なる例外的な例があり、今後確認の必要があるものの、GCプロフィールによる判別が簡便な種の同定法であることを確認できた。従って本研究目的は達成できたと判断している。 また本研究の過程で、高湿度環境を好むダニを微生物のコンタミがなく安定して衛生的に継代飼育できる寒天培地を考案した。便利に使っている。さらに継代飼育しているコナダニを材料として警報フェロモンや性フェロモンを同定し、また新規化合物を合成により同定した。 これらの結果は11編の論文として公表した。
|