研究課題/領域番号 |
09556011
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
後藤 三千代 山形大学, 農学部, 助教授 (10007081)
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研究分担者 |
鈴木 幸一 岩手大学, 農学部, 教授 (20003791)
五十嵐 喜治 山形大学, 農学部, 教授 (00111336)
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キーワード | 休眠 / 休眠覚醒 / 耐寒性 / 訓化温度 / 無酸素条件 / トレハロース / アラニン / ヒエホソメイガ Enosima leucotaeniella |
研究概要 |
耐寒性は休眠期に高まるものと考えられてきたが、休眠覚醒後に耐寒性が高まる昆虫の存在が知られるようになり、改めて休眠と耐寒性の関係が問い直されている。本研究は耐寒性に及ぼす休眠の役割を明らかにすることを目的とし、1997年度は休眠覚醒後に冬を迎える昆虫について、休眠期と休眠覚醒期における体内成分、とくに糖類と遊離アミノ酸含量の差異を比較することを目的として研究し、以下の結果を得た。 ヒエホソメイガ越冬幼虫は本格的な冬を前にした11月に休眠から覚醒する。越冬幼虫を-5°Cから15°Cの温度条件下で1ケ月間訓化すると、休眠期においては、血液中のトレハロース含量は温度低下とともに増大し、5°Cでピークとなり、0°Cでは高い値を維持したが、-5°Cで低下した。アラニン含量は5°Cより増加を開始し、0°Cでピークとなり、-5°Cで高い値を維持した。一方、休眠覚醒後においては、アラニン含量は0°Cで休眠期より著しく低下し、トレハロース含量は有意に高まった。休眠期の影響の意味をみるために休眠覚醒期の越冬幼虫を無酸素条件(空気を窒素で置き換える、以下処理区と記す)においたところ、0°C下で無処理区と比べてトレハロース含量は低くなり、アラニン含量は高まった。一方、処理区と休眠期との間にはトレハロースおよびアラニン含量とも有意差はなかった。 以上から、トレハロース含量は低い訓化温度条件下で増大し、トレハロース含量が高い温度区で耐寒性が高いことから、トレハロースは耐寒性物質と考えられる。また、休眠と低温が重なるとアラニン含量が上昇し、トレハロース含量が減少することが示されたことから、アラニン含量を低下させ、トレハロース含量を上昇させるためには、ヒエホソメイガ越冬幼虫は冬季に休眠から覚醒していなければならず、このことが冬を前にして休眠から覚醒する背景であると考えられる。今後アラニンの性質を明らかにするとともに、休眠期に冬を迎える昆虫の休眠の役割について、さらに研究を進める予定である。
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