栽培現場において根の色が黒色であると「不健全」、褐色であると「健全」であると定性的に判断されている。その判断基準となっている、褐色根色と黒色根色の画像解析・定量化を前年度開発した画像解析手法を用いて行った。さらに、作物体の元素含量、土壌溶液中の元素含有量との関連性を吟味した。その結果、堆肥施用・科学肥料無施用区では、堆肥無施用・化学肥料施用区に比較して、褐色根が多く認められるという定量的判断が可能となった。これは、栽培現場での定性的評価法を画像処理により、定量的に評価できる手法を開発したことになる。 また、イネ体の元素分析によれば、堆肥施用・化学肥料無施用区では、堆肥無施用・化学肥料施用区に比較して、根のFe/S比や出穂期のイネの葉身、葉鞘・茎、穂のケイ酸含量が高い値を示していた。これらの事実は、堆肥施用・科学肥料無施用区の根の酸化力が堆肥無施用・化学肥料施用区に比較して強いことを示し、このため前者が褐色根色を呈する根面積が広くなると推論された。 以上の研究結果は、根色により、地上部や地下部の元素組成を予測することがある程度可能であることを示すものであり、根色の定量化による作物体の栄養診断が実現可能であることを示唆するものである。
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