小柳津らによって分離されたイネ科植物の根に非常に強い親和性を示す細菌P.fluorescens HP72のカビ病に拮抗する原因について解明するため、拮抗物質の構造解明を行った。その結果、この細菌の作る拮抗物質はPh1であることが明らかとなった。次にこのPh1を生産しない変異株をニトロソグアニジンによる変異誘導で作製し、これらの株に拮抗性があるか確認した。この結果、拮抗性は拮抗物質の生産とは関係なく、根での生残性が拮抗性の原因になっていることが判明した。今年度は微生物農薬の開発研究とは別に、植物のリン酸吸収およびマンガンなどの微量要素の吸収を促進する微生物資材として、アーバスキュラー菌根菌(AM菌)およびその他の植物共生菌類の開発に関する研究も行った。トウモロコシとコムギの輪作を行っている圃場において、トウモロコシの栽培期間にこれの根に共生する菌類の感染率を測定したところ、特定の菌類で感染率の著しい上昇が見られた。この菌について、マンガン吸収との関係について統計的解析を行った結果、この菌の感染は植物のマンガン吸収と深い関わりがあることが判明した。この菌類はまだ分離、同定されていないが、微生物肥料として有望と考えられた。また、AM菌の多様性が土壌の肥沃性と関係しているかを解明するため、分子生物学的手法によるAM菌の多様性の評価技術の開発を行った。この結果、植物根内のAM菌を直接同定する方法が確立された。現在、この手法を用いて火山灰地帯に最初に生育するいわゆるパイオニア植物のAM菌の同定を行って、パイオニアとしての能力との関係を解明している。
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