研究概要 |
筆者らは、日本産および中国産イチイに含まれる新規タキサンジテルペノイド類の単離と構造解析を行うと共に、イチイから比較的に豊富に得られるタキサンジテルペノイド類からタキソール関連物質へ変換のための化学反応を検討した。さらに、単離物質について生物活性の評価を行った。 1)中国産イチイ(Taxus maireおよびTaxus yunnanensis)の針葉、樹皮および種子をメタノール抽出、濃縮、クロマトグラフ、TLC分取により2環式タキサンジテルペノイド類(3,8-secotaxanes)29種、A縮環式化合物[11(15→1)abeotaxane類]8種、B環転位化合物[2(3→20)abeotaxane類]5種およびnormal型taxane類13種の計55種の新規物質を単離し機器分析により化学構造を解明した。今回、単離したnormal型の中、4,5-位に2重結合の転位した新規α,β-不飽和アリルアルコール体は2環式taxane類とともに生合成経路上で鍵化合物と考えられる物質であった。 2)日本産イチイ(Taxus cuspidata)からも同様にして新規タキサンジテルペノイド類として2環式化合物3種、A縮環式化合物2種、B環転位化合物1種、normal型taxane類2種の計8種を単離、構造解明を行った。新規のnormal型taxane類としてA環のエポキシ化物と4,20-位エポキシ化物が単離された。 3)日本産イチイから分離された5-cinnamoyl triacetyltaxicin Iを脱シンナモイル化の後、エポキシ化した物質を(iPrO)_3TiCl処理して種々の新規エポキシ環開環物を分離し構造解明した。さらに、taxinineおよびtaxusinの脱シンナモイル化物をDMDO酸化を行い、生成物の化学構造を解明した。さらに、癌培養細胞を用いる生物活性試験により二環式タキサンジテルペノイドとイチイ抽出水溶性区分にも活性があることを見いだした。
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