研究概要 |
個葉・群落レベルのガス交換過程と分光放射特性モニタリング 桐生水文試験地、赤穂試験地において,個葉・群落レベルでCO_2/H_2O交換量の観測を実施した。桐生試験地には平均樹高17mのヒノキ人工林で高さ25mの観測用タワーが設置されており、定期的な乱流変動法によるガス交換量の継続観測が進められている。赤穂試験地は平均樹高4mの常緑広葉樹林で、光合成蒸散量測定装置(Licor Li-6400)、スーパーポロメーター等を用いた個葉レベルの観測が定期的に行われている。これによって,赤穂試験地に関しては,群落樹冠構造の影響を考慮したCO_2/H_2Oフラックスのシミュレーションモデルが構築された。モデルは,林内の放射環境,フラックスの鉛直分布を計算することができる。また,桐生試験地のに関しては,ビッグリーフ型の樹冠一層モデルが構築され,長期の蒸散量やCO_2の吸収量が算定できるようになった。どちらのモデルもコンダクタンスモデルと光合成生化学モデルを組み込んでおり,放射環境に対するレスポンスを再現できる機能を持っている。 植物の生理・生態学的反応と分光反射特性の関係についての実験 個葉レベルで分光放射特性と葉の生理特性の関係を明らかにするために,Li-6400と分光放射計を用い,常緑広葉樹を用いた室内実験を行った。この結果,分光放射計の測定によって得られるNDVIは,光合成速度とは一対一の単純な関係にはならず,個葉レベルでもリアルタイムの光合成活性を把握するためには,可視・近赤外行きのリモートセンシングで得られる情報に加えて,熱赤外域のリモートセンシングで得られる葉面温度等の付加的な情報が必要であることが示唆された。植物体に水ストレスを与えた実験では,従来知られている,レッドエッジのブルーシフトが確かに測定された。これが生じる原因は,これまでいわれてきているように,クロロフィル密度の減少等によるものではなく,葉構造内の水分減少の結果,光学的に光の吸収・散乱の特性が変化するためであることが示唆された。
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