研究課題/領域番号 |
09556034
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡野 健 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30011927)
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研究分担者 |
広瀬 英雄 北見木材, 代表取締役(研究職)
空閑 重則 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (60012051)
和田 昌久 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (40270897)
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キーワード | 楽器用材 / 響板材 / トウヒ / 中国産木材 / クモスギ / ヤング率 / 振動特性 / 損失正接 |
研究概要 |
中国四川省で採取した(1)Picea complanata(油麦吊雲杉:直径66cm、原木丸太の年輪数374、直径50cm、年輪数141)、(2)P.balfourniana(川西雲杉:直径62cm,年輪数350、直径62cm、年輪数387)、(3)P.asperata(粗枝雲杉:直径54cm,年輪数152)、(4)P.purpurea(紫果雲杉:直径80cm、年輪数291、直径54cm、年輪数304)、(5)P.likiangansis(麗江雲杉:直径54cm、年輪数216、直径62cm、年輪数293)、さらに中国東北林業大学の劉一星教授から提供された(6)P.koraiensis(白松)の計6種の中国産トウヒ属の木材の振動試験、光顕・X線による形態解析を行った。研究の背景には、中国産トウヒ属の木材には優良な楽器響板適材がある可能性があるが、従来研究データが乏しい。そのため市場では一括して「雲杉」の名で扱われ、その結果、貴重な材が処を得ていない。 原木を川雅木業有限公司で選木し、髄を含むフリッチに製材し、乾燥して輪人した。動的ヤング率、剛性率、損失正接は両端自由の自由振動試験の1〜7次モードによった。光顕、X線回折の試料は、振動試験片の平均的なものから採取した。得られた結果を典型的楽器用材であるシトカスプルースと比較すると、(1)(2)、(3)は密度が小さい。(2)繊維軸方向の比ヤング率が小さい。(3)(1)、(3)、(6)は半径方向の比ヤング率が小さい。(4)(2)を除けば繊維軸方向の損失正接は小さい。特に(1)、(3)は小さい。(5)半径方向の損失正接が30〜50%大きい。(6)楽器用材として重要な識別因子であるEr/Grは、大きいものと小さいものがあり、同じ種でも原木によって違いが著しい。 今回の調査木は160年〜400年生であり、それ自体貴重な材であるが、楽器用材としてみると、適材は少なかった。しかし、中にはきわめて優れているものがあるので、それを能率的に正しく選別できれば、すばらしい響板、すばらしい楽器を作ることができる。
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