研究課題/領域番号 |
09556037
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
黒田 宏之 京都大学, 木質科学研究所, 助手 (00115841)
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研究分担者 |
黒田 慶子 森林総合研究所, 北海道支所, 室長
高井 一也 井筒屋化学産業株式会社, 開発部, 課長
鈴木 敏雄 井筒屋化学産業株式会社, 開発部, 取締役開発部長
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キーワード | アコースティックエミッション / エンボリズム / マツノザイセンチュウ / 誘導抵抗性 / スチルベノイド / スチルベン合成酵素遺伝子 / クローニング / 大腸菌による発現 |
研究概要 |
材線虫病の進行を診断・解析するために、アコースティックエミッションtろビデオモニタにより仮道管内め水切れ過程を詳細に検討した。その結果、正常なマツでは水切れが回復するが、ザイセンチュウの侵入したマツでは不可逆的な水切れが起こることが見出された。この不可逆的な水切れ(エンボリズム)が水不足の原因となってマツは枯れると結論された。 実学的な立場から、マツの抵抗力を高めることを目標に薬剤試験を行った。芽生えを用いた線虫接種試験では、薬剤をスクリーニングすることにした。その結果、材線虫に対するマツの抵抗力を高める新規誘導抵抗性薬剤を見出すことができた。次に、材線虫制御に対するスチルベノイドの有効性を試験した。材料としては3年生苗木を実験材料として選んだ。誘導抵抗性薬剤処理後、材線虫接種をした苗木では、枯れの遅延や枝の付け根で停止する個体が見られた。一方、薬剤処理等によるスチルベノイドの蓄積は、当年枝ではほとんど見られないが、1年枝やその付け根の節部分に観察された。その含有量は正常心材相当の高濃度であり、当年枝に接種されたザイセンチュウはこれらの組織を通過しにくいと推定される。 スチルベノイド生成が材線虫病制御に有効であることが示唆されたので、スチルベノイド生合成の鍵ステップであるスチルベン合成酵素遺伝子をクローン化し、これを大腸菌内で発現させて機能することを確認した。 以上の結果を総合すると、机上の空論でない「マツ枯損防止のための新戦略」として、スチルベノイド生成を通してマツの抵抗力増強と材線虫病制御が可能だと考えられる。
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