ポストCCA木材防腐剤として申請者らが開発したキトサン金属塩系薬剤(CCSとCZS)は実験室レベルの薬剤性能試験では極めて優れていることが確認されたが、これをさらに実用化するためには解決しなければならない問題点が幾つかある。まず、実大材における薬剤の浸潤度(浸透性)の改善である。次に、実用上必要で充分な処理効果があるかどうかの判定、すなわち褐色腐朽菌とシロアリに対する防腐効力の実用的な評価である。本年度はCCSを用いてこの2点について検討した。まず、これまでに使ってきた高分子キトサン銅塩(CCS1)の浸透性を改善するために、PEGで変性処理した変性キトサン銅塩(MCCS)、ならびにCCS1を生成中に副産物として得られる低分子化キトサン銅塩(CCS2)の浸透性能と実大材中への浸潤度について、CCS1lと比較した。ここではJIS A-9201の薬剤吸収量のかわりに薬剤浸潤度を用いて、浸透性を評価した。CCS1は開放木口面から20mmと80mmにおける浸潤度の比を示すK値が0.5以下であったのに対して、CCS2とMCCSのK値はいずれも1.0、0.8と非常に高く、高い浸透性が認められた。ただし、CCS2はCCS1より木材中での固着性能が劣る点は問題である。また、実大材での浸潤度は樹種によっても異なった。スギやベイツガの辺材では全く問題なかったが、ベイマツでは浸潤度が悪く、さらに改善を要する。次に、CCS薬剤で処理した木材の実用的な防腐効力については、既報のとおり、CCS成分は褐色腐朽菌のオオウズラタケおよびシロアリに対して金属元素を木材中に1kg/m^3以上吸収させることによって、充分な防腐効力を発現することができた。また、CCS処理木材の野外暴露試験では5年間を経過した現時点においても、シロアリおよび菌類による被害はほとんど認められず、極めて安定した効力の発現が確認されている。
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