研究概要 |
本研究は中・深層生態系研究の鍵となるゼラチン質プランクトンとマリンスノ-を効率的に採集する装置を開発することを目的とする。本年度は以下の項目について設計・試作・試験をおこなった。 1.基本設計:深海に存在する脆弱な生物・非生物の個別採集を考慮して設計した。装置は吸引口、採集器本体および制御装置からなる。吸引口から吸い込まれた試料は試料容器に収容される。容器回転用モータと位置検出装置の連動により、各採集ごとに別の容器が吸引口に接続され、6回の採集が可能である。吸引口は潜水艇のマニピュレータに固定されホ-スで本体に接続されるため、採集物の位置や動きに応じて広範囲かつ迅速な採集ができる。主な仕様は以下の通りである。寸法:64x58x40cm;空中重量:40kg;ホ-ス径:50.6mm;標本容器:1.5liter;電源:DC28V,500W;耐用水深:2000m;ポンプ:DC18V,75W可変流量式,15liter/分;モータ:DC15V,27W;位置検出器:リ-ドスイッチ-マグネット方式。 2.上記設計に基づき各構成要素の組立と作動・耐久・耐圧試験を行った。この結果、(1)ポンプおよび回転用モータの作動は油浸状態で空中の2/3であり、200kg/cm^2で正常に作動すること、(2)制御装置が正常に作動しポンプの最大出力が15liter/分であること、(3)ホ-ス、採集容器、フレームが深海での反復使用に充分な耐久性を備えることを確認した。 3.全装置を組立て室内水槽で作動試験を行い、正常に作動することを確認した。また、(1)移動性の大きい生物についてはポンプ流量を増やす必要性、(2)試料容器内の網目(0.3〜2mm)の大きさによって流量が変動することなどが指摘された。次年度は「しんかい2000」での現場採集試験を行う予定である。
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