1. ドジョウ倍数体の特性評価:通常交配により作出した二倍体、四倍体、そして三倍体(二倍体雌×四倍体雄)を、孵化後2ケ月令より約2年3ケ月間同一水槽で飼育し、諸特性を比較した結果、以下の点が明らかになった。(1)倍数体間に生存率の差はない。(2)三倍体の体長、体重は二倍体、四倍体より有意に大きい。(3)二倍体の卵形成は四倍体より早く進行し、三倍体の卵数は少ない。(4)四倍体の体長に対する尾柄長は有意に大きい。(5)倍数体間で単位重量あたりDNA量に差はない。(6)倍数体間で脂質含量に差は無い。なお、平成9年度作出の六倍体、五倍体(六倍体×四倍体)、四倍体(六倍体×二倍体)の諸特性についての比較飼育試験は継続中であり、結論を得るには至らなかった。 2. ドジョウ高次倍数体の作出:三倍体非還元卵に由来する雌性発生三倍体を雌親魚として、HCG注射による排卵誘発を試みたが、今年度は良質卵が得られず、実施できなかった。 3. ギンブナ人為倍数体の特性比較:三倍体ギンブナ卵のキンギョ精子による受精後の高温処理による精子核取り込み操作から生じた四倍体を、同腹の雌性発生三倍体とともに同一の水槽で10〜14ヶ月飼育し、諸特性を比較した結果、以下の点が明らかになった。(1)両者の体長、体重に差は無い。(2)三倍体は全雌であるが、四倍体では卵巣を示す雌は半数で、残りの生殖腺は未分化。 4. ギンブナ自然四倍体の特性と維持:野生集団ギンブナ中に四倍体を偶々発見、養成し、得た成熟卵をキンギョ精子で受精し、生じた子孫の遺伝的特性を調査したところ、これらは四倍体雌でクローンであることが判った。ギンブナ倍数体の研究を今後、さらに発展させるための材料が確保できた。
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