研究概要 |
本年度においてホルモン処理により非妊娠マウスにおいて乳腺の発達及び泌乳を誘起する実験系の開発を行った。ホルモンの影響を明らかにするため、乳腺の発達を形態的に評価する方法とミルクタンパク質(カゼイン)遺伝子発現から機能的に評価する方法の開発を行った。 1.マウスを用いホルモン処理による誘起泌乳系の確立 プロジェステロン(10mg)とエストロジェン(0.1mg)のペレットを作成し、皮下に埋没した。1,2,3週間後に第3乳腺のホールマウント標本を作製した。ホルモン処理2週間後から乳管系の著しい発達が観察された。発達の程度は、妊娠中期以降のそれとほぼ等しい。次に20日後にペレットの除去と同時にコルチコステロン(0.1mg)を投与した。乳腺細胞内に多量の脂肪的が出現し泌乳が始まったことが分かった。 2.カゼインmRNA測定及びin situ用プローブの作成 泌乳開始の指標としてカゼイン遺伝子発現を調べる方法の開発に着手した。乳腺組織中の分子量23kと26kのカゼインmRNAの絶対量を測定するため競合的RT-PCR法を確立した。満足する検出感度と正確度が得られた。一方、これらの遺伝子発現の乳腺での局在性を明らかにするため、in situに用いるdigで標識したRNAプローブを作成した。最初にcDNAをプラスミドに組み込み、RNAポリメラーゼを用いて合成した。ノーザン法により特異性を調べた。23kカゼイン用プローブから約1.0kのmRNAが、また、26kカゼイン用プローブから約1.2kのmRNAが検出された。報告されている塩基配列と大きさが等しいことを確認した。 来年度予定している研究に対して実験モデルと分析手段の目処がたった。
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