アデノウイルスベクターを用いた各種動物での免疫機構解析法の開発

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09556066
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 甲斐 知恵子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (10167330)
• 研究分担者: 宮沢 孝幸 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (80282705) ; 山内 一也 日本生物科学研究所, 研究部, 主任研究員 (30072888) ; 間 陽子 理化学研究所, ライフサイエンス筑波研究センター, 研究員 (50182994) ; 小船 富美夫 国立予防衛生研究所, 病理部, 主任研究官 (80142644) ; 斉藤 泉 東京大学, 医学研究所, 助教授 (70158913)
• キーワード: アデノウイルス / ジステンパー / 牛疫 / 細胞性免疫 / CTL / ウシ白血病ウイルス / MHC

研究概要

本研究目的は、組み換えアデノウイルスを用いることにより、多くの高等動物で汎用できるウイルス感染における自然宿主での細胞性免疫機構の解析法を開発することにある。本年度は基礎的研究を行い、以下の成果を得た。
(1) 細胞性免疫に関与すると考えられるCDVのH,F蛋白について、野外株の遺伝子をクローニングし、塩基配列を確認後アデノウイルスに組み込むためのトランスファーベクターpAxCAwtに組み込んだ。
(2) 牛疫ウイルスのH蛋白遺伝子を組みこんだアデノウイルスを細胞に感染させて蛋白発現を検索したところ、蛍光抗体法のみで弱陽性を認めた。発現量が低いため、あげる必要性があることがわかり、検討を行っている。このウイルスをウサギに腹腔内投与し免疫原性を検索したところ、幼弱化試験では陽性を認めたがCTL能は誘導できなかった。この結果は発現量に起因する可能性が高いため組み換えウイルスの作製を改良する予定である。
(3) ウシ白血病ウイルス(BLV)による白血病発症とウシ主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)(BoLA)クラスII遺伝子との相関性について解析した。BLV感染牛のゲノムDNAから、PCRにより増幅したBoLA-DRB3の第2エクソン267塩基対の塩基配列を決定し予測されるアミノ酸配列を比較した結果、BLVによる白血病に対して抵抗性の可能性が示すアリルをみいだした。次に、この仮説をBLVの実験感染動物ヒツジを用いて検証し、BLVによる白血病発症とBoLAクラスII分子との相関性を明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Yoshida,E.,et al.: "Epitopes and nuclear localization analysis of canine distemper virus nucleocapsid protein by expression of its deletion mutants" Vet.Microbiol.(In press).
• [文献書誌] Nakamura,K.,et al.: "Molecular cloning and sequence analysis of the phosphoprotein (P) gene of the lapinized rinderpest virus" Virus Gene. (in press).
• [文献書誌] Yamanouchi,K.,et al.: "New approaches to the development of virus vaccines for veterinary use" Rev.Sci.Tech.Off.Int.Epiz.17(3). 641-653 (1998)
• [文献書誌] Yoshida,E.,et al.: "Molecular analysis of the nucleocapsid protein of recent isolates of canine distemper virus in Japan" Vet.Microbiiol.59. 237-244 (1998)
• [文献書誌] Tajima S.,et al.: "Complete bovine leukemia virus (BLV) provirus is conserved in BLV-infected cattle throughout the course of B-cell lymphosarcoma" J.Virology. 72. 7569-7576 (1998)
• [文献書誌] Inabe K.,et al.: "The YXXL sequences of bovine leukemia virus transmembrane protein are required for maintenance of viral penetration and incorporation of viral envelope protein into virion" J.Virology. 73. 1293-1301 (1999)
• [文献書誌] 甲斐知恵子: "ウマからヒトに感染するモービリウイルス感染症" 遺伝, 5 (1999)
• [文献書誌] 間陽子: "疾患感受性を規定するウシMHCクラスII分子の構造と機能" 動物遺伝研究会誌, 12 (1998)