研究概要 |
研究代表者らはニワトリW染色体特異的な反復配列XhoI,EcoRIファミリーを見いだし、これらのゲノムクローンをプローブとして、DNA・DNAハイブリダイゼーションまたはPCRによりGallus属(ニワトリ、野鶏)の初期胚の性判別を行ってきた。しかし、これらのプローブ配列は属特異的であるため、広く深胸類鳥類のDNAレベルの性判別に利用できるプローブの開発を目指した。雌ニワトリの中期染色体標本に対してレーザーマイクロビーム照射を行い、一本のW染色体のみを残して焼却し、このW染色体DNAをランダムPCRで増幅してラムダファージベクターを利用したW染色体特異的ゲノムライブラリーを作製した。このライブラリーからW染色体上のXhoI,EcoRIファミリードメインの中間に位置する約25kbの非反復配列をクローニングした。さらにこの領域中のEE0.6(0.6kb Eco RI断片)配列が多くの鳥類種でW染色体上に保存されていることが分かり、この配列を鳥類性判別のユニバーサルプローブとして利用できるか検討した。その過程で、EE0.6関連配列がZ染色体上にも存在し、W、Z上の配列の相同性が種によって異なることが分かった。EE0.6をプローブとして17目34種の雌雄DNAに対するサザンブロットハイブリダイゼーションを行った結果、雌特有のバンドのみが検出される種と雌特有のバンドの他に雌雄共通のバンドでシグナル強度が雄2:雌1となるバンド(Z染色体由来)が検出される種に分かれた。雌特有のバンドは常に認められることから、鳥類性判別へ広い応用の可能性が示唆された。ニホンコウノトリではW、Z染色体上のEE0.6関連配列をクローニングし、塩基配列を比較して、両者を識別できるPCRプライマーを設定することにより、羽一本由来のDNAを用いて確実にPCR法による性判別が行えるようになった。
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